2006年 05月 08日
涼宮ハルヒの憂鬱 第6話 「孤島症候群(前編)」
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如何に京アニといえど、前回のような高いテンションを維持し続ける事は難しいようです。そんなわけで、今回は割とおとなしめな回となっています。
「孤島」で「台風」、そして「殺人事件」という、あまりにもありふれ過ぎて、思わず裏を疑ってしまいそうなシチュエーションが、今回の舞台となります。
前回とは方向性がまるで異なり、SFと言うより殆どミステリー小説の世界ですが、それについては古泉氏の探偵論に潜ませるかたちで語られていました。
曰く、ハルヒが「孤島」という状況に求めるものは、ミステリーの要素を秘めた事件であり、彼女が望む役柄は、「名探偵」であると。そして名探偵とは、事件を呼び寄せる特殊な能力を持つ存在なのだと。
そして、その言葉がまるで予言であったかのように、事件が起こってしまったあたりで物語は一旦の幕を下ろします。続きとなる後編は、最短でも再来週まで待たなければいけません。
第6話に至るまでに、私がこのアニメに対して抱いた不満は、一つだけでした。それが以前にも書いた、「時系列を理解しにくい」というものです。
ですが、今回でそれに加え、もう二つほど不満な点が出てきました。
一つは、声優の演技と、その台詞の口調が安定していない事。
これは今回で崩れたのか、それとも原作通りならあれで適切なのかは定かではありません。台詞の口調に関しては、恐らく原作通りなので、変わりゆくであろう“これから”をすっ飛ばした結果として、違和感を覚えるかたちになった可能性も否定できません。しかしどちらにしろ、前回と今回を比べれば、違和感を覚える程度に変わっていたのは確かです。
たとえば、今回のハルヒからは、一般的に連想されうるツンデレの「ツン」状態の、その型にわかりやすくはまっているという印象を受けました。
前回までは、ツンデレの「ツン」という点では同じながらも、若干それがわかりにくいという印象を受けていました。私はそれを個性と捉え、面白さを感じていたのです。
ストーリーが進むごとに、こうして変わっていってしまうのだとしたら、原作ファンの言う“もっとも面白い巻”が、第1巻にあたる「~憂鬱」と、第4巻にあたる「~消失」に二分されているのも頷ける話です。と言いますのも、原作は現在第8巻まで出ており、ファンの嗜好をそのまま面白さの指標として解釈するなら、第5巻以降はさして面白くないという事にもなるからです。
とはいえ、この点に関しては、原作に倣う以上はどうにもならない事でもあります。しかし、第6話を観ていて、初めから終わりまでずっと違和感を抱えっぱなしだった私としましては、やはり残念に思ってしまうのです。
そしてもう一つの不満点、それは原作も含めたこの作品が持つ危うさを、具体的な例をもって見せ付けられてしまったという事です。
「涼宮ハルヒの憂鬱」の世界は、あくまで一つの可能性としてですが、“すべての事象がハルヒの思うがままになるのかもしれない”という、非常な危うさをはらんでいます。
たとえばですが、ハルヒが望めば、宇宙人や未来人や超能力者が一同に会し、一緒に遊ぶという、客観的に見て明らかに異常と思える事態を実現させる事さえ可能です。たとえば、彼女が望めば、それこそ人だって死んでしまうのです。
つまるところ、ハルヒ本人に何ら自覚が無いとしても、事情を知っている第三者から見れば、彼女は人殺しに見える事だってありえてしまうという事です。
この危うさを、今までは“萌え”というオブラートに包むかたちで上手く誤魔化せていたのですが、今回はそれが思い切り露出していたように思います。
そのあたりの話題こそが、これの後編で語られる事になるのだろうと期待しているのですが、実際のところはどうなのでしょうね。
こういった内容のシナリオに関しては、さすがに二週続けて放映した方がいいように思えますが、恐らくはこれも計算のうちなのでしょう。
正直に言いまして、今回の話を私はあまり楽しめませんでした。しかし、それが後編でくつがえる可能性も少なからずあります。というわけで、気長に待つ事にいたしましょう。
by kidar
| 2006-05-08 06:30
| 涼宮ハルヒの憂鬱