2006年 06月 05日
涼宮ハルヒの憂鬱 第10話 「涼宮ハルヒの憂鬱4」
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朝比奈さんの、本当の年齢について考えてみます。
キョンの眼前に突如として現れた、「朝比奈みくる」を名乗る妙齢の女性。彼女は、自身をより未来から来た、もう一人の朝比奈みくるだと言うのです。
この二人が同一人物だという仮定に基づいて、現在の彼女の年齢を推察してみます。
より未来から来たと称するもう一人の朝比奈さん、便宜上朝比奈Bさんと呼ばせていただくとしまして、この朝比奈Bさんと朝比奈さんの二人には、流れ去った時間を感じさせるほどの明確な違いが見て取れます。
具体的に言いますと、朝比奈さんは朝比奈Bさんの時代へ達するまでに、彼女を知るキョンでさえ他人と疑うほど、肉体的に明確な成長を遂げていたという事です。
「成長を遂げた」、此処が重要です。
成長したという事実は、現在の朝比奈さんが成長期の最中、もしくは以前にある事を示しています。即ち、最大でも17、8歳程度で、それ以上というのは物理的に成立が難しいと考えられるのです。
そして彼女、現在の朝比奈さんは、現時点でさえ既に成熟したと言えるほどの肉体をそなえています。実年齢に相応しくない、過剰な発育を示す子供が稀にいるとはいえ、あれほどの体型を獲得するには、極端に稀な例を除けば、最低でも15年ほどは必要になると思われます。
更に、彼女が明らかにしている目的の一つ、即ち「涼宮ハルヒの監視」を滞りなく行うためには、ハルヒから見た彼女の立場、つまり「一学年上の上級生」というそれを、確固たるものにしておく必要があります。理由は言うまでもありませんが、彼女の身上について、ハルヒに疑念を抱かれてしまうような事があれば、どんなかたちであれ任務に支障をきたしてしまう可能性が非常に高いからです。そのため、一般的な高校二年生レベルの素養は最低でも身に着けておく必要があり、そうした観点から見ても、最低ラインはせいぜい14・5歳程度と考えられます。
しかも、あくまでそれは彼女が実年齢相応以上の素養や立ち居振る舞いを身に着け、行使できるだけのキャパシティを持つ事が前提にあっての話です。現在の朝比奈さんにそれが可能かと言いますと、恐らく不可能でしょう。彼女は間違いなく天然です。それが可能になるのは、朝比奈Bさんくらいの年齢に達してからではないでしょうか。つまり、リアルに年上である可能性が高いのです。
以上の事から、現在の朝比奈さんの実年齢は、大体16~17歳程度と推察されます。
彼女がこの時代のこの場所に身を置くにあたり、もっとも重要視されたであろう事は、「周囲に疑念を抱かせない」事だと思われます。疑念を抱かせないためには、不自然な要素を極力排除し、可能な限り自然に近付ける必要があります。突き詰めれば、「朝比奈みくる」という立場に身を置く者は、極力その立場に近い者である方が望ましいという事になります。
そのように考えますと、もっとも適切なのは、実際の高校二年生の年齢、即ち16~17歳程度という事になるのです。
結論としては、無難というか、面白みのないものになりましたが、可能性としては低くないと思います。彼女がハリウッド女優並の演技力を身に付けている可能性も勿論ありますし、時間を移動できるほどの技術力を獲得した文明ですから、肉体や精神を、実年齢にかかわらず望むままに操作する技術が存在する可能性もあります。そうしたイレギュラー的な可能性を除外し、キョンの視点から得られる情報だけを頼りに推察するなら、彼女の実年齢はこのようなところに落ち着くのではないかと思います。
さて、話は秋の空ほど突然に変わりますが、意外にも、キョンは優れた運動能力を有していたようです。
いえ、この場合は運動能力と言うよりも、反応速度と言うべきでしょうか。
ともかく、微塵の警戒もしていないところに、岩さえ両断しそうな必殺の一撃を浴びせられたにもかかわらず、間一髪でそれを避ける事ができる程度の運動能力を持っている事は間違いありません。
朝倉さんが、初撃の時点で本気ではなかった可能性もあります。しかし、その本質は長門さんと酷似しているであろう彼女の性質から見て、そんな回りくどい事をする必然性が見当たりません。目的如何にかかわらず、「やる」と決めたのなら、躊躇い無く迷い無く、最初の一撃で仕留めようとするでしょうし、実際、あの場面ではそうしたと思われます。となれば、キョンが朝倉さんの初撃をかわし、その後の数撃をもかわし続けたという事実は、朝倉さんに何らかの理由があったためにそういう結果となったのではなく、単純にキョンの運動能力が優れていたためであると考えるのが、もっとも適切だと思われます。
台詞の一つ一つや、その言い回しを取って見ると、キョンが存外に明晰な頭脳を有している事がわかります。「孤島症候群」での推理は、それをよく表した好例と言えるでしょう。
「意外」だの「存外」だのといった形容動詞は、彼にとってあまり名誉とは言えない言葉です。しかし、作中におけるキョンの周囲の人々も、何故か総じて彼を過小に評価しているように見受けられるのです。彼が学校内において特別視される理由があるとするなら、それは「変人・涼宮ハルヒと行動を共にしているから」という一点以外にありません。
客観的な観測により得られる情報から彼の性質を推察するに、非凡と言えるほどではないにしろ、運動能力、反応速度、知識量とその活用方法など、そういった様々な面において、常人以上の能力を有しているものと思われます。少なくとも、いわゆる一般人の領域は逸脱していると言っていいでしょう。そんな彼が、「普通」と称されてしまう原因は、何処にあるのでしょう。
単純に、「矛盾」や「主人公補正」といった単語ですべてを説明付けてしまうのは簡単です。しかし、そこにあるかもしれない、けれど無いかもしれない理由に思いを馳せてみるというのも、悪くはない楽しみ方だと思います。
ところで。
朝比奈さんの胸元のほくろですが、どうやら星の形をしているようです。
そして、朝比奈さん自身も気付いていなかったこのほくろの存在を彼女へ教えたのが、他ならぬキョンだというではありませんか。問題は、いつ、どこで、どうしている時に気付き、教えたのかという事です。
脳細胞がピンク色を帯びている、たとえば私のような人が安易に辿り着くであろう結論をあえて避け、現在出ている情報から推察してみます。
もっとも妥当と思われるのは、自主制作映画の撮影最中に気付き、教えたという可能性です。原作で言えば第4話に相当するこの第10話の時点では、その後の未来に起こる事などキョンに知り得よう筈もありませんし、またその時間軸の人間に、不注意からとはいえ未来の情報を与えてしまうという失態を犯した朝比奈Bさんの狼狽にも説明が付きます。頬を染めたのも、映画撮影時の恥ずかしさを思い起こしての事と考える事ができます。
「私とはあまり仲良くしないで」という、去り際に残した一言は、彼女自身がこれから起こると予言した、「困った事」に関連した注意なのでしょう。
上記のように考えますと、話の筋は通ります。気付き、教えた時期を確定する事まではできませんが、仮に自主制作映画の撮影時ではないとしても、同じような状況下においてそれに至ったという事は想像に難くありません。
しかし、何と言いましょうか、得物を釣ろうという意図があからさまに見えているように思えてならないのです。私の主観によるところが多分にある事は否定いたしませんが、引っ掛かったのは、きっと私だけではないでしょう。むしろ、ないと信じたいです。
存外と言うにもあんまりなほど長くなってしまいました。しかし、まだ書き残した事があるのです。それについては、また後ほど書かせていただこうと思います。
by kidar
| 2006-06-05 12:40
| 涼宮ハルヒの憂鬱