2006年 09月 10日
「わたしたちの田村くん」
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著者はラブコメのマイスターこと竹宮ゆゆこさん、イラストを担当するのはヤスさんです。
シリーズ第1巻となります。
本作には、2人のヒロインが登場します。
主人公の田村雪貞君と、第1のヒロインである松澤小巻嬢との出会いは、中学生としての最後の夏となります三年生の夏休み直前に訪れます。
第2のヒロインである相馬広香嬢との出会いは、それから紆余曲折を経て、受験を目前に控えたとある夜の出来事となります。
いわゆる三角関係の描かれる物語なのですが、本巻ではそこまでは達さず、その前提が築かれるまでが描かれます。
率直に申しまして、かなり面白いです。
「とらドラ!」を読んだ時から思っていた事ではありましたが、竹宮ゆゆこさんは、ことラブコメに関しては、天下無双と申しましても過言ではない書き手だと思います。
何と申しましてもまず、主人公の田村君のキャラクターが素晴らし過ぎです。
歴史を愛し、鎌倉時代に思いを馳せ、北条時宗をリスペクトしているという彼は、自身の事を三人兄弟唯一のおちこぼれ、自他共に認める地味な存在であると認識しています。ですが、それは大いなる間違いです。
いい具合に頭のネジがゆるんだその言動の数々は、読者がどれだけ我慢しようとも、笑ってしまう事必至です。それも狙っている訳ではなく、素の言動というあたりがポイントです。
勿論、それは受け手の感性にも大きく左右される問題ではありますが、少なくとも私にとっては、最強クラスの面白主人公なのです。
主人公からしてそのような調子ですから、その主人公の視点で綴られる物語がおかしなものとならない筈がなく、常にナナメ45度ほどズレた状態で描かれていきます。そのズレが、非現実的となり過ぎない範囲で絶妙のバランスを保っており、それがまた余計におかしさを誘うのです。
ですが、田村君はただ面白いだけのキャラクターではありません。決めるべきところでは、ビシッと決めてくれるキャラクターでもあるのです。
普段が変人である分、そうした場面ではより格好良さが引き立ちます。そして、その格好良さがまた、普段の変人ぶりを引き立てるのです。
そのような訳で、甲乙つけがたい魅力を持つヒロインの2人よりも、なお本著の面白さに貢献しているのは、主人公田村雪貞君の存在であると、ここに明言いたします次第です。
さて、現在私の手元には、本シリーズの第2巻が既に鎮座ましましております。
まだ読んではいませんが、間違いなく面白いという確信を持っています。数日中には「とらドラ!」の最新刊も手にできるでしょうし、しばらくは楽しみに事欠かないと思われます。どちらも、読み終えましたらまた雑感など書いてみるつもりです。
by kidar
| 2006-09-10 11:00
| ライトノベル